東京高等裁判所 昭和31年(う)1944号 判決
被告人 青山勉こと竹下孜
〔抄 録〕
控訴趣意第一、二点について。
按ずるに、銃砲刀剣類等所持取締令第一五条にいわゆる「あいくちに類似する刃物」の意義を詳らかにするには、まず「あいくち」の概念を明らかにしなければならない。すなわち「あいくち」とは社会通念上「あいくち」の類型にあてはまる形態、実質をそなえる刃物であつて、刃先のとがつた両刃の鍔のない柄又は束を有し、これを人目につかぬように所持するに便利な形態をなし、人を殺害するに足るものは勿論傷害するに適当な性能を有するものを指称すると解すべく、「あいくちに類似する刃物」とは右の「あいくち」に類似する形態を有し、人を傷害するに適当な性能を有する刃物を汎称するものと解する。しかして、記録及び証拠により明らかな本件刃物(原庁昭和三一年証五九〇号の一)は刃渡一八、五糎、片刃で、その刃先はほとんど直角に切れて、その切れた刃先も刃身と同様片刃になつており、いささか「あいくち」と異る形状ではあるが、鍔のない鋭利な刃物であることには変りなく、これを懐中、または鞄、風呂敷等に容れて人目につかぬように所持するに便利な形態をそなえ、人を傷害するに足る性能を有し、用い方によつては、人を殺害することのできるものであることが認められるので、これをいわゆる「ぬしや小刀」と称しペンキ屋の刷毛を作るに用いるものであつても、なお「あいくちに類似する刃物」と断ずるに憚らない。原審証人高井米昨の供述は本件刃物がいわゆる「ぬしや小刀」としてその用法を明らかにしたにすぎず、右の認定の妨げとなるものでなく、当審検証の結果によるも右認定を覆えすに足りない。また、被告人は本件刃物を原判示のように特飲店において携帯していたのであるから、日常生活を営む自宅ないし居室において所持していた場合と異り、客の来集を目的とする場屋内において携えていたものというべく、同法条の「携帯」に該当する。
従つて、所論を参酌するも原判決には法令適用の過誤、事実誤認等判決に影響を及ぼすべき瑕疵をみいだしがたいので論旨はいずれも理由がない。
(工藤 草間 渡辺好)